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2004.6

6月1日(火)

初めてシリーズ第1弾
「ユニクロ」

春先の話になるが、初めてユニクロに入った。
安い安いとは聞いていたが、一度も行ったことがなかった。
あんまり興味がなかったし、あの手の服なら近くのスーパーで間にあっているからだ。
その日、ひとりで車を走らせていたら、たまたま大型ショッピングモールに出会った。
「(そういえば、新興住宅街に大きいのができたって言ってたっけな・・・)」
食料品専門のスーパーと、ドラックストア、100円ショップ、ユニクロ、回転すし・・・
みごとに激安ショップばかりが集中している。

駐車場に車を乗り入れ、物見遊山でユニクロを覗く。
未体験ゾーンへ・・・

純毛セーター、500円!
ジーンズ、500円!
フリースの上着、500円!
フリースのパンツ、500円!

季節変わりということも手伝って確かに安い。
純毛セーター500円は思わず買おうかと思ったほどだ。

でも、難点が。
セーターは品質は良いが、どう見ても飽きそうな柄だった。
「(いまいち・・・)」
フリースは薄くてペラペラ。
「(一度洗濯したら溶けてなくなりそう・・・)」
ジーンズは硬くてずっしり重い!
「(ゴワゴワだ・・・)」

自慢じゃないが私が持っているフリースはスーパーで購入した300円や500円くちだが、
どれもしっかりと厚手で暖かい。

ユニクロは安いけどそれなりってことのようです・・・
結局、偵察だけで店を出るtuzi。

なーんだ、ユニクロって巷で言われてるほどじゃないじゃん♪(鼻歌)




6月5日(土)

「春は・・・」

私は藤原紀香のようにナイスバディではないし、
叶姉妹のようにフェロモンムンムンでもない。
ファッションにも興味がなくお色気とはおよそかけ離れたところにいる・・・

太極拳教室の帰りに昼食を食べようと、ひとり街を歩いていた。
その日の私は、カラージーンズに手編みのサマーセーター。
ジャージの入ったベネトンのバッグを肩からかけて、いつものようにぼーっと歩いていた。
・・・と、
目つきの怪しい中年の男性が向ってきた。
ま、こんなん不思議でもなんでもなく、どこにでもありがちな人物だ。
だって、私が藤原紀香や叶姉妹なら警戒するかもしれないが、
私は対象外でしょうが!
どう見ても役にたたんでしょうが!

そんなわけで年間通して警戒心ゼロの私・・・

が!
時期は春まっただなか
誰でもよかったの?
その男、すれ違いざま私のお尻に触った!
今触ったわよね!
奴は確かに触った!

クーッ・・・

同じ日の帰りの電車の中でも。
横長のイスで、けっこう空いていたので隣とは1mは開いていたと思う。
隣の20代半ばの男性は私との間に自分のリュックを置いていた。
そしておもむろに漫画本をだして読みだした。
別に不審なむきは感じられない・・・

その男、リュックにもたれかかり徐々に姿勢が崩れてきた。
・・・ちょっと!息がかかってるんですけど!
クンクン私の匂いを嗅いでませんか!
隣の男はわざわざリュックを床に置いた。
なんで?
リュック下ろさなくてもいいじゃん。
間にあったリュックをはずしてしまったのだ。

私との間にさえぎるリュックがなくなった男は、
エスカレートしてきて体がくっつきそうなくらい倒れてきた。
しかも視線はずっと漫画本に!
漫画本を読んでいると見せかけたまま!
不自然でしょうよ。
おかしいですよあなた、その姿勢。
明らかに辛そうな体制になってません?
ずっとページめくってないでしょって!

車内は空いているので私は席をずらして座り直した。
離れてさっきの男を盗み見たら・・・
シャキッ!として漫画読んでいるんですけど!
リュックは脇に置きなおしてるんですけど!

クーッ・・・

春は無差別なのかよっ。




6月10日(木)

「餅」

我が町ではにお祭りがある。
屋根の上で舞が披露され、それが終わると振る舞い餅が見物客に配られる。
配られるというか、屋根から撒かれるのだ。
しかし、大変な見物客だから、この振舞い餅にありつくのはよほど運がよくないとキャッチできない。

私も見物していたのだが、屋根から遠くにいたし、
もし餅が飛んできたとしても私の運動神経ではまずキャッチなどできそうにない。
「(ここまで届かないだろうしなあ・・・)」

・・・と、ぼーっと餅撒きを見物していた私の頭に
「イテッ!」
ぽたっ。

頭に当たった餅が広げた手にストンと落ちた!
これぞ、棚からぼた餅?
奇跡的偶然とでもいうか・・・
痛かったけど縁起のいい当たり餅。

今年が当たり年でありますように!

・・・って、‘食あたり’は勘弁して下さい。




6月15日(火)

「借用書〜連載第1回」

私は生まれてこの方、お金の貸し借りをしたことがない。

父にパチンコ代を「貸して」と言われても、せびられているのも同然で、
「貸しだからね」とは言うもののかえってこないものと思って渡している。
私のほうも「これはあげた!もってけドロボー」状態だ。
このように親子間での貸し借りなんて、貸したうちには入らない。

友人同士のお会計と言うのも、持ちつ持たれつで実際お金がやりとりされるわけではなくて、
ご飯おごるおごられた、くらいのことだ。
割り勘てのもなんだかヤボだしスマートじゃないし・・・くらいの。
「まあ、今日のところは私がおごっちゃる」とか、
「こないだはご馳走になったから今日は私が」とか・・・
そんな程度の事で、どれもこれもそこにはさして深い事情なんて存在しない・・・

私にはたとえそれが金融機関においても
シビアなお金の貸し借りなんて一生縁のないことと思っていた。

ところが、こないだ思いも寄らないことが起こったのだ。
人生何が起こるか分からないものだ。

・・・話はこうだ。
父の知り合い(同業者)の息子さん(50歳くらい)は父子代々の職人さんで
時々我が家にもお茶をしに来たりして顔見知りの人だ。
私が外出から帰宅すると久しぶりにお茶を飲みに我が家に来ていた。
我が家は田舎だし、こうしてふらっと人が出入りするのはごく自然なことで、
別段用事がなくとも‘お茶飲み’に行ったり来たりする。
私も顔見知りのその息子さんの家は旧家である。
「ただいまー」と帰った私に父が「おいtizi、おまえ筝いらないか?」と言う。
その息子さん(仮Aさん)の家に誰も弾かなくなった筝があると言う。
私も別に熱心に演奏をするでもないし、現在持っているので充分なのだが
この田舎で筝があると聞いて‘お宝’級の年代物なのでは、と興味がそそられた。
「今度見せてくださいよ♪」と軽い気持ちで答えておいた。
Aさんのお父さん(90歳くらい)のお姉さん(既に他界)が若い頃に弾いていたものだという。
「誰も弾かないから売りたい」なんて言っているが、冗談だと思っていたので、
「今度伺って見せてもらおうかな♪」なんて何気に言った時Aさんの顔が曇った。
「いや、親父には内緒で売りたいんだよな・・・」
売る、って本気なの?
「お琴っていくらぐらいなの?」
「さあ・・・私も中古で買いましたから。新品でも数万円から上限はないでしょうねえ・・・」
そんなことを話して私は茶の間を離れ、着替えに部屋に向った。

30分くらいしたろうか・・・
Aさんがご自宅から筝を持ってきていた!

はやっ!!

筝を包んでいる布は色あせ、ボロボロの粋に達していた。
弦は随分古くに張り替えてはいるものの、絹糸ではなかった。琴柱がない。
私の持っている琴柱を立てて弾いてみたが、弦が緩んでいて音が定まらない・・・
ちゃんとした音をだすためには糸締めが必要なようだ。
だからといって楽器が悪いわけではない。整備が必要なだけだ。

「いくらくらいかねえ・・・」
「そうですねえ、琴柱がないし・・・」
「5万では?」
私が今持ってるのが10万。それよりは楽器が劣るし、不備もある。
「うーん、だったら遠慮します」
「4万?」
4万では安い買い物ではない・・・
「いやあ・・・」
「3万」
「そうですねえ、私が譲っていただくなら3万円が限度ですね」
まあ、私だって元々いらないわけだから、‘せいぜい3万’という意味だ。
それ以上で買うつもりはない。そうふんでの値段だった。

「いいです!」
いいです!って‘それだったら売らない’の意味だよね。
「3万でいいです!売ります」
へ?本気で売るの?筝を?3万で?
うそでしょう?冗談でしょう?

私は一瞬耳を疑いました。
ていうか、私も買うことになろうとは思いもよらなかったです!
3万で譲るなんて言い出さないと思っていましたから・・・
ただ、筝ってどれだけになるものか、そんなふうに思って聞いただけなのだと思っていました。

ともあれ私はいきがかり上、3万で筝を買い上げることになってしまったのです。
誰か他の人ならもっと高い値で買ってくれると思うんだけどなあ・・・
うん、絶対そうだよ!だって3万は安いかもよ。
私も相場は知らないから、高いか安いか分からないけどさあ・・・
質草にしたらそれこそ1万、2万と叩かれるのだろうけど、
筝を習っている人とか、必要な人にとっては3万は安い買い物かもよ・・・

ま、どちらにせよ事の流れで私は買い手となってしまったのでした。

しかも、この話しには続きがあって、
Aさんがこんなに即決で売りたかったのには深い訳があったのです。




(次回につづく)




6月20日(日)

「借用書〜連載第2回」

私は生まれてこの方、お金の貸し借りをしたことがない。
する気もなかった。
そのような事態は避けねば、とも思っていた。

Aさんがいとも簡単に3万という私の言い値で家にあった筝を手放すことにしたのには
なんとも切羽詰った訳があった。

・・・話はこうだ。

Aさんは仕事仲間の窮地を救うため、借金していた。
人の借金をなくしてあげる為に、自分の家の土地を担保にして自分名義でお金を借りてあげたのだ。
義理もないところで人にお金を借りてあげてそのお金を渡した。
まあ、Aさんとしては相手を信用しての事だろう。
でも、だからって、貯金を崩してとかそういうんじゃなくて、Aさんにもないお金をどうして
担保までつけて借りてあげる必要がある?
私からしたらお人よしもいいとこだと思うけど!
連帯保証人とか、保証人とかもバカだけど、
わざわざ自分の土地(ていうかお父さん名義の土地だと思うけど)を担保にしてまで
他人のために借りてあげるなんざあ、バカだよ!

その額、300万!

借りたのはAさん。
借りてあげて相手に300万渡した。
その相手は行方知れず。
300万は戻らない。
Aさんに残ったのは300万プラス高利の借金!
なにやってんだ?

Aさんのお父さんはできの悪い(学校の成績ではない)息子が思いやられ、
「俺が生きているうちに家があるかどうか・・・」とこぼしていたと言う。
しかも、この不況でAさんは仕事すらしてない。
他人のために大金を借りてあげてる場合じゃないだろうによ!

借金として残ってからもAさんは働いていない。
人間、ヤル気になればできないことなどない。
私から見てAさんはこの期に及んでも甘いのだ!

それで、借金の返済時期を迎えて手元にお金のないAさんは家にある
売れるものを持ち出しては売っぱらってる、という訳だ・・・
アホじゃ!

我が家にやってきたその日は返済期日だったというわけで
「とりあえず5万必要」ということだった。
しかし、筝を売っても私に「3万!」と言われてしまったAさんは
「筝は3万でいいです。7万を貸しにして10万もらえないだろうか」と私に持ちかけてきた。
50歳近いだろう大の大人が、小童(こわっぱ)の私に7万のお金を貸して欲しいと言っている・・・
情けないではないか。
本人だって情けないことは承知しているのだろう、
その言い方にはどこかさりげなく高ぶっている印象を受けた。
しかも私は小童の上に女だし・・・

ところが、この女小童は見た目と違ってそう甘くない!

7万の貸し・・・
いや、この筝を10万で買い。
できない相談だ!
私の中で‘貸す=あげる’なので、筝に10万という考えになっていた。
家に10万を置いていないわけではない。
しかし、私は「家に今10万を置いていませんので、お貸しすることはできません」と答えた。
「いや、今日でなくてもいいから」と粘るAさん。
情けをかければ私は10万を貸せないわけではない。
しかし、とにかく貸したくないのと、戻らないということを覚悟のうえで私が用意できる額は
「5万ならだせます。3万は筝代金、2万ならお貸しできます!」
私の腹は筝に5万だしたと思えば納得できる、というものだった。
これから支払いに行くというAさんがとりあえず今日必要なのは5万のはず。
Aさんは明日からの生活費も含めてあと5万余分に借りたかったのだろう。

明日の生活にも事欠いている・・・なのだ。

私が足元を見たなんて思わないで欲しい。
筝代3万は事情を知らずに決めたことだ。
私だって意外だったし、事情ありと知って出費5万を覚悟したのだ。

貸し金にしては2万は小銭かもしれない。
それでもAさんはそれで納得して私から2万を借りることになった。

私は生まれて初めて人にお金を貸した・・・



明日の生活費にも困るAさん・・・

私はAさんが必要な額を貸すこともできた。
だからといって、それがAさんの解決になると思うほど私は甘くない!
Aさんがむやみに他人を信用して、祖先が残してくれた財産を使い果たそうとしていること、
その他力本願のお人よしが直らない限り解決はないのだと思う。

高齢のお父さんに顔向けできない親不孝してそれで我が家にやって来る前に、
死に物狂いで働くこと、それをせずにお金を作ろうとしている甘えが直らない限り
何度だって繰り返してしまうだろう・・・

Aさん!
自分に厳しく、そしてキッパリ断る強さを持ってください!

次々に明らかになるAさんの事情には続きがあります。
そして、私がむかえたマヌケなクライマックスとは・・・


(次回につづく)




6月25日(金)

「借用書〜連載最終回」

私は生まれてこの方、お金の貸し借りをしたことがない。
いや、なかった。
お金に困ったAさんが家に伝わる筝を持ち込んでくるまでは・・・

その筝は借金のかたに私に売られてしまった。
それも二束三文で。
実際はどうか誰にも判断できるものではないが、本来Aさんさえお金に困るようにならなければ
持ち主の家に置かれてあるもので、人手に渡るようなことにはならなかったはず。
しかも相手の言い値で手放すなんてことにはならなかったはず!
この筝もかわいそうな運命になってしまったものだ・・・

その新しい持ち主となった私もなんとも複雑な思いだ。
もしやこの筝、縁起悪い?
なんてことも頭をよぎる。
いやいや、ものは考えようだ。
この筝は私が‘お預かり’しよう!そう考えることにした。

Aさんには娘さんがいる。
今年、中学3年生。
奥さんとは結婚せず赤ちゃんだけ置いていかれた。
おおかた愛想をつかれたのだろう。この人と結婚したところで見込みがない、と。
ところで、中学になる娘さんだが、これが優秀な娘さんだと聞いたことがある。
現在Aさんが自己破産もせず、担保も手放さず返済にこだわっているのは、
この娘さんの事があるからだった。
Aさんは「中学を卒業すれば、友だちも変わるし、
丸裸になって学校の近くに借家住まいしても区切りの時期になるまでは
今の家に住み続けていたい」そんな思いがあるからだった。
働いていないAさんに収入はない。生活はお父さんの年金でまかなっているのだろう。
それも情けない話だよね。
ほんとだったらお父さんには悠々自適な老後を送ってもらうべく息子がしっかりせにゃならんところへ
祖先が残してくれた財産を食いつぶすような息子では・・・

それにしても、明日の生活費にも困っているAさん。
電話代も払えず止められたことがあると言うし、
年金の前借ができないものか役所を訪ねたこともあるという。
受付では人目をはばかって言い出せなかったが、年金担当の役所の人に意を決して相談したところ
「いまだかつて、そういった前例はない」と言われ、とりあえず1年間は払わなくてもという
処置をアドバイスされて帰ってきたという。

私だったら
「あぶく銭手に入れることより働くことを考えろよ!」
と言うが。

話はそれるが。
少し前、年金のコマーシャルに起用された女優が国民年金を納めていなかったことで騒ぎになった。
その後は、こともあろうに国会議員(閣僚)3氏の未納も発覚した。
女優も国会議員も「年金程度のはした金なんか貰わなくたっていいや」という
老後に対する経済的余裕からの未納だろう。
だって、いい訳が「忘れてました」「うっかりしてました」だもん。
そんなこと老後を憂いている人が言えるはずもないではないか!
私などは老後の収入が途絶えた時「わずかな年金に頼る」しかないのだ。
うっかりでなんか未納になるはずもない!
例えはした金でも切実な問題なのだ!
「老後は年金なんかいらない=余裕」
「今現在、年金を納めるお金がない=老後も年金がもらえない=生活ができない」とでは
雲泥の差があるのに、表面上はどちらも「未納」ということしか見えてこない・・・

中川氏などは23年間未納で200数万円の未納なのに納めなければないのは30数万円。
麻生氏にいたっては2年以上遡ったのは追徴にならないとかで60数万円の未納に対して追徴金は0円。
僅かな収入の中から老後に備えて泣く泣く年金を支払ってることがバカバカしくなってしまう。
だからと言って支払わなければ老後年金がもらえない・・・
「どうにかしろよ!」と食って掛かりたい国会議員が支払っていない年金・・・
でてくるのはため息ばかり・・・

話をAさんに戻すと。
Aさんにお金を貸し付けてもよさそうなものだよね。
だって、自分が支払ってたのを一時引き上げる、
若しくは老後支給されるはずの年金を前借する、って考えればいいわけなんだし。
ま、それはできなかったらしいんだけどね。

それに、中学3年生の娘さんは5月に修学旅行を控えている。
そして、進学はどうなる?
将来ある娘を犠牲にはできない。
しっかりしてくれよ!
今、私にできることは筝に5万だすことだけだ。

Aさんは「なにか一筆書きますか?」と言った。
「そうですね、じゃなにか」
別に戻ってこなくても元々の2万だ。
書いてもらうつもりはなかったがAさんから言ってきたので、なにか書いてもらうことにした。
私だって、書き方も知らないし、正式な書類となりうるかどうかなんて知らない。

便箋とボールペンを渡して、なにやら書き終わり
「んじゃ」
と手の中に隠し持っていた朱肉をおもむろにさしだす。
抜かりはないつもりだった・・・



ところが肝心の期限がないためか、いまだに貸した2万円は戻ってない・・・


(完)










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